「了解」は失礼って本当?「承知」との違いを文法的に考察!

どーも、アーモンです!

よくビジネスマナーとかで「『了解です』は目上の人に使うと失礼なので、かわりに『承知しました』を使いましょう」って聞きますよね。

でもそれって本当なの?と疑問に思った人も多いのではないでしょうか。

私も学生の頃は日本語学を専攻していたので、そういった話題には疑り深くて社会人になる前に調べたことがあります。

その時にした考察を書いていこうと思います。

記事では分かりやすくするため、かなり簡略化した説明になっています。
また、筆者はかつて日本語学を専攻していたに過ぎない一般人であるため、不勉強な部分もあります。

何卒ご了承ください。

目次

【結論】「了解」も「承知」もフラットな意味、「了解です」はNGかも

先に結論を言ってしまうと、「了解」も「承知」もその言葉自体の意味はフラット(敬意がある/ないの違いはない)です。

ただ、「了解」に「です」をそのままくっつけた了解です」は文法的には正しいとはいえません

そのため、「『了解です』はNG」というのが転じて「『了解』という単語自体が目上に対して失礼」となっていったのではないかと考えています。

ここからはその理由などについて詳しく見てきましょう!

「了解」と「承知」の意味

まずは「了解」と「承知」という単語の意味から見ていきましょう。

ここでは新明解国語辞典を参考にします(手元にあったため)。

「了解」の意味

まずは『了解』から!

りょうかい【了解】・【諒解】−する(中略)

事の内容や事情が分かる(分かって納得する)
「––を得る(とりつける・求める)/––事項」

②思いやって事情などを容認すること。

(中略)

<運用>

①は相手からの指示・命令に対して納得したことを表す返事として用いられることがある。

例、「『救援隊ただちに出勤せよ』『了解』」

山田忠雄編(2020)『新明解国語辞典』第八版, 三省堂.

特に目上に対して使用するのは不適切だという表記はありません。

ビジネスシーンで使われる場合は「①事の内容や事情が分かる(分かって納得する)」がほとんどでしょう。

また、<運用>の項目にも記載されている「①は相手からの指示・命令に対して納得したことを表す返事として用いられることがある。」とあります。

これは、(「了解“した”」ではなく)「了解」という単語のみで、「わかりました」という意味の返事として用いられることがある、ということでしょう。

アーモン

用例に軍隊っぽいやりとりが取り上げられているのにも注目!

「承知」の意味

次に「承知」を見ていきましょう。

しょうち【承知】–する(中略)

①情報に接して、内部の(詳しい)事情を知っていること。
「ご––〔=ご存じ〕の通り/百も––している〔=分かっている〕/無理を––で/すべて––に上で」

(して)いいと認めること。
「要求を無理に––させる/悪口を言うと––しない〔=許さない〕ぞ」

山田忠雄編(2020)『新明解国語辞典』第八版, 三省堂.

おそらくよく「分かりました」の意味で使うときには②の意味を採用しているのだと思いますが、ちょっとしっくりこないかもしれませんね。

デジタル大辞泉には次のような語釈がありました。

しょう‐ち【承知】

[名](スル)

 事情などを知ること。また、知っていること。わかっていること。「無理を—でお願いする」「君の言うことなど百も—だ」「事の経緯を—しておきたい」

 依頼・要求などを聞き入れること。承諾。「申し出の件、確かに—した」

 相手の事情などを理解して許すこと。多く下に打消しの語を伴って用いる。「この次からは—しないぞ」

デジタル大辞泉, https://www.weblio.jp/content/%E6%89%BF%E7%9F%A5
アーモン

こっちの2の説明の方がイメージしやすい!

どちらにせよ、基本的には「承知」にも敬意が込められているというわけではなさそうです。

細かい意味の違いはあるものの、敬意が含まれている・いないということはなさそう

細かい意味については辞書によるところもあるのでここでは深く追求しません。

とりあえず、「了解」にも「承知」にもその言葉自体には敬意が込められていたり、目上に使うと不適切ということではないことだけ確認しておきましょう。

「です」「しました」「いたしました」の違い

さて、ビジネスマナーを紹介しているサイトの中には「『了解“しました”』はダメだけど『了解“いたしました”』ならOK」と書いているものもあります。

確かに「しました」はただの丁寧語であるのに対して、「いたしました」は謙譲の意味も含まれるので一見正しいようにも感じます。

しかし、それであれば「承知」でも同じことが言えるはずです。

また「了解」には「了解です」という使われ方もありますが、「承知」は「承知です」とは普通言いません。

アーモン

前の会社にはなぜか「承知です」って言ってた人もいたけどね…。
正直すごい変な感じ!

ここで、「です」「しました」「いたしました」について整理してみましょう!

「です」の使われ方

「です」は「〜だ」の丁寧な言い方で、体言(名詞などのことです)や形容動詞(「きれいだ」や「穏やかだ」など)にくっついて丁寧な表現にします。
また、現代では形容詞(「美しい」「おいしい」など)にも使われますね。

アーモン

昔は形容詞に「です」を付けるのは間違いとされていたんですよ〜

では、「了解」や「承知」などは名詞なので「です」がつくのが適切かと疑問に思われるかもしれません。

しかし、「了解」や「承知」は名詞であるとともに「了解する」や「承知する」という動詞の一部でもあり、
そういったものについては、基本的には「○○です」と言っても「○○する」という意味は表されません

他にもこんなものもあります(サ行変格活用動詞というやつです)。

  • 意識する
  • 確認する
  • 送信する
  • 理解する
アーモン

他にもキリが無いほどたくさんあります!

「○○です」という言い方が不自然では無い場合もあります。

たとえば、「これはただの“確認です”」

この場合、丁寧な言い方をやめてみると「これはただの“確認だ”」となり、
「これはただの“確認する(した)”」とは言い換えられません。

つまりこの場合の「確認」は名詞として使われているので、「です」がつくのです。

「しました」の使われ方

続いて「しました」について見てみましょう。

「しました」は「する」に過去と丁寧さの意味を加えた形になります。

・「する」+<過去>=「した」
・「する」+<丁寧>=「します」
・「する」+<過去>+<丁寧>=「しました」

では、「しました」の元となる形の「する」について

もちろん「する」単体で動詞になりますが、みなさんご存じの通りサ行変格活用動詞という一部の動詞の一部にも使われますね。

「了解する」や「承知する」もその動詞の一つです。

ですので、「了解する(した)」や「承知する(した)」を丁寧にする時は、
「了解しました」「承知しました」と表すのが適切です。

なぜ「了解します」や「承知します」という言い方にならず「〜しました」という言い方になるかは、
説明すると長くなるので割愛します!

「いたしました」の使われ方

続いて「いたしました」についてです。

「いたしました」は「しました」の謙譲語です。

謙譲後、つまり自分のが行う動作をへりくだって言う表現ですね。

ですので、「了解しました」や「承知しました」をより敬意を込めて表現するのであれば
「了解いたしました」「承知いたしました」を使うといい
と思います!

本来「了解しました」が適切で「了解です」は特殊な使われ方

ここまでみてきたように、「了解(する)」を丁寧に言いたいときには「了解しました」あるいは「了解いたしました」が適切だということが分かりました。

つまり「了解です」という使われ方は特殊な表現なのです。

「了解」は、そう言った特殊な使われ方が広まっているため、いつの間にか「了解」という言葉自体が目上の人物に対して使うのは失礼にあたる言葉だと勘違いされてきたのではないでしょうか。

アーモン

でも、なんで「了解」だけそういう特殊な使われ方が広まったんだ?

次はそんな疑問に対して考えていきましょう!

「了解です」が広まった理由

「了解です」はよく聞きますが、「承知です」「理解です」とかってあんまり聞いたことないですよね。

それはなぜか。

私は「了解」という言葉単体で「了解した」という動詞的な意味を持つようになったからなのではないかと思ってます。

「了解」自体の意味を辞書で調べたときに、用例として軍隊の連絡みたいなやりとりがあげられていたのを覚えていますか?

<運用>

①は相手からの指示・命令に対して納得したことを表す返事として用いられることがある。

例、「『救援隊ただちに出勤せよ』『了解』」

山田忠雄編(2020)『新明解国語辞典』第八版, 三省堂.
アーモン

あ〜、あったあった!

こういうふうに、簡潔さを求められる軍隊などの無線連絡で「了解」という単体で「了解した」ということを表す使い方が広まりました。

そうして単体で動詞的な意味を持つようになった「了解」なので、それにそのまま「です」をくっつけることで丁寧な表現とされていったのかもしれません(※あくまで推測に過ぎませんが…!)。

「『了解』はもともと軍隊で使われていた表現で粗野な印象を与えるため、ビジネスシーンでは不適切」と説明している方もいるみたいですね。

でも会社も軍隊みたいなもんやんね…

「了解」以外の言葉でも「〜です」をつける流れになってきている

「了解」以外の「承知」や「理解」「把握」も、あまり広まってはいないものの
「〜です」という言い方が全くされていない、というわけではありません。

先にも書きましたが私の前の会社ではお客さん相手に「承知です」と言っている人もいましたし、

だいぶ前にオンライン人狼をしたときに、チャット欄で「理解です」や「把握です」という表現をみました。

また、ニュースなどでも「今夜、首相が○○を“発表です”」のように、本来なら「発表します」とするところを「〜です」の形で使っています。

「了解しました」は使っていい?

で、結局「了解しました」って言えば問題ないってこと〜?

こんな疑問に対して、個人的には「問題ない」と答えます。

実際、私も会社員時代に社内の先輩や上司に対しては「了解しました」も使っていましたし、
それについて注意されたりもありませんでした。

アーモン

意味のわからんビジネスマナーにちょっとでも反抗しようと思ってね…

しかし、その言葉遣いが失礼かどうかは相手が失礼だと感じるかどうかによります。

そして、相手が失礼と感じるかは世間で失礼とされているかどうかに左右されることが多いです。

結局は相手に合わせて、もし相手がどう思うか予想がつかないのであれば「承知しました」を使えばなんの問題もありません。

【まとめ】「了解」は本当に失礼な言葉なのか?

さて、いかがだったでしょうか。

ビジネスマナーへの反抗によって、こんな記事を書くに至りました。

当たり前とか普通とかマナーとかって、偉大な権力が決めているのではなくなんとなく作られてきたものって本当に多いです。

そして、それを信じる人が増えると常識になっていきます。

そういうことに「理不尽だ!」と思うこともありますが、
余裕があればちょっと皮肉を交えてこんなふうに楽しむのも手ですね。

ではまた!

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